💡 この記事は株式会社ヘンリー Advent Calendar 2024の15日目の記事です。昨日は坂口さん(@wakwak3125)の「あなたの検査がカルテに書かれてから結果が返ってくるまでに裏側のシステムでは何が起きているのか」でした。明日はdamさんです。
こんにちは、ヘンリーでVPoEをやっている張(@shenyu_cyan)です。私滅多にブログを公開しないのですが、もしかしたら同じ悩みに遭遇したVPoEやEMの方々にヒントを与えられると思い、考えを共有することにしました。
無名なVPoE
タイトル通り、私は無名なVPoEです。もちろん有名無名を断言する基準は世の中に存在しないと思いますが、いくつかの実体験からそう感じ取ることができます。
例えば、ヘンリーではダブルVPoE制を導入しており、人事本部VPoEのSongmuと製品部門VPoEの僕の二人で担当しています。勉強会などで他の方とお会いした時に、「Songmuさんがいるヘンリー社ですね」や「ヘンリーさんにもう一人のVPoEがいたんですね」とよく言われます。たぶん多くの方はSongmuの方だけ認知しているでしょう。
また、よく講演に招待されたり、発表を依頼されたりする方々がヘンリー社内に多くいらっしゃいます。ヘンリー社内に登壇記録を残すデータベースがあり、よく見てみると私の出現頻度がその中でかなりの下位になっています。🤦♂️
実は人付き合いがちょっと苦手で群れない生活を送ってきたから、知名度に興味がないどころか抵抗感を覚えていました。だから知名度を高めるために発信を重ねる考えは全く持っていませんでした。どちらかと言えば、むしろそういう行動は本質的でなくあまり意味がないとすら考えていました。しかし、VPoEとして採用活動に携わり始めてから知名度の重要性を実感し始めました。
スタートアップで奮闘しているVPoEの方々は体感できていると思いますが、知名度がなければ開発組織がいくら良くても認知されないので、とにかく採用に不利です。今のような高度情報化社会において、アテンション(人々の注目と関心)は最も価値のあるリソースの一つだと言われています。知名度が足りなければアテンション競争から簡単に離脱してしまいます。各種のサーベイやリサーチで見過ごされ、アプローチしたい層に伝えたい情報が見向きもされない状況になってしまいます。その結果、本当に合う候補者様は会社の良し悪しを判断する段階にすら至らないまま転職活動を終えてしまいます。SNSで転職失敗談を見た時、「もし弊社のことを知っていたら…」と思ったりする苦い経験がたくさんありました。
さらに、信憑性の問題も出てきます。私がヘンリーに参画したのは2021年頃で、社員数は10人強でした。中小病院向け電子カルテHenryのリリースは2023年なので見せられるプロダクトもありませんでした。経営会議のような定例ミーティングがなく、全社同期会だけ存在し、毎回ランウェイを見て内心でビクビクしながら解散する形で行っていました。本当にプロダクトも金も実績もないスタートアップと言って過言ではありませんでした。普通に考えれば、そんなよくわからない会社の無名VPoEがスカウトメールの中で自社をどれだけアピールしても何の信憑性もなかったでしょう。
生存するには
そんな不利要素満載な状況下で、無名VPoEとしてどう生存すべきでしょうか?考え出した回答は実にシンプルで、長所を発揮し、短所を避けることでした。
私の場合、発信は苦手ですが耳を傾けることは好きです。前職でスクラムマスターを務めたこともあり、サーバントリーダーシップの思想が頭の中に叩き込まれました。それに複数の国に住んだことがあり多様な文化に触れた経験があるので、人の長所を引き立てることは相対的に得意だと感じます。これは採用の中で2つの角度から活かせたと感じます。
一つは候補者様の長所を見つけ出すことです。当然ながら候補者様の中に自己アピールが上手な方もいれば、苦手な方もいらっしゃいます。スカウトのフェーズから入社に至るまで長所を探し続けるよう意識していました。面接のフェーズで欠点探しのやり方で進める企業さんもいらっしゃいますが、私は逆に強み探しにフォーカスしたほうが良い採用につながると考えます。
もう一つはヘンリーの会社とチームメンバーの魅力を引き立てることです。選考プロセスの中で真摯に対応せず課題を隠したり嘘をつくことは最悪だと思っていますが、本来ある魅力が候補者様に伝わらないこともかなり悪いと考えます。なぜなら、候補者様にとって必要な判断材料を提供できなかったことに等しいと感じるためです。候補者様に認知してほしい情報を整理し、選考プロセスおよび担当者をカスタマイズし、申し送りの実施などで魅力を把握していただくことに努めました。もちろん時間がかかったりしましたが、多くの企業様の中から、この無名VPoEからの声かけに反応してくださった数少ない候補者様だから、ちゃんと向き合うべきだと考えました。
それに、あえて自分たちの短所で勝負する必要がありません。採用はもちろん大事ですがVPoEの仕事は採用だけではありません。ありがたいことにSongmuが入社された後、採用・広報類のようなヘンリーの顔になる仕事を積極的に引き受けてもらえましたので、採用マーケットの競争で知名度不足による不利を回避することがきました。上記で言及した私の長所は社内のチームづくりでもっと役に立つと最初から認識していたので、わざわざ自分の短所で勝負することを避けました。
ただ正直なところ、この解決策が取れる環境は限られていると思います。その場合、無名を逆手に取ってその特徴を活かす考え方があり、多くの人が実践できると考えます。どの業界でもアテンションが集まる人間はほんの一握りで、有名人たちの見え隠れの輪に入れる人は限られています。メリトクラシーに対する反省や最近話題になった「縦の旅行」で指摘されたように、輪の中にいる人たちは頭が良く経験豊富でも、外にいる人たちに共感すること自体が難しいです。そのため、むしろ無名だからこそ多くの方の気持ちを理解でき、寄り添えると考えます。
発信力の向上
とはいえ、VPoEにとって知名度は一種の武器だと思うので、ないよりあった方が良いと考えます。知名度が高い方々全員が発信力があるかというと確信はありませんが、発信力を持っている方は知名度が高まりやすいと感じています。
SNS上で発信力を軽んじる声も時々聞きますが、私はそう思わず、スキルの一つだと認識しています。”技術力がない癖に書いた記事が度々バズり、イベントに招聘されて偉そうに語る”ことに対する不満の気持ちは理解できなくもないですが、限られた角度からの観測では技術力をジャッジしにくいですし、仮に本当に技術力がなくても発信に関わるスキルを否定する材料にはならないでしょう。
もっと言うと、発信力を一括りで述べていますが、実は細分化すれば情報収集力、整理力、表現力、影響力など複数のスキルが含まれています。そのため、発信力はかなり高度なスキルで簡単に身に付くものではないと考えます。発信を繰り返せば、情報収集から表現まで一連のプロセスの練習になるので上手くなる近道かもしれませんが、あくまで一つの解です。発信力を高めるには、自分が欠けている具体的な能力はどこなのかを先に特定すればより多くの改善策が生まれ、実践しやすいかもしれないと思っています。
最後に
気づいたらいくつかの概念を混線させ、長々とまとまらない文章を書いてしまいました。生存戦略をブログタイトルに入れていますが、つまるところ、採用活動を頑張ってイベントを開催しても参加者がなかなか集まらず、時間をかけてスカウトメールを書いても返事が来ない日々が続き、自己否定になりそうな方々にエールを送りたい気持ちが根幹にありました。
知名度の足りなさで全面的に劣っているように映りやすいですが、あくまで必要スキルの一部が劣っているだけで、私たちの考え方や能力全てが遜色している証明にならないと、同じ苦悩を持っている方に私は主張したいです。私が生きてきた人生の中で完璧な人間に出会ったことがありません。その中でうまく行っている人たちは自分の強みを最大限まで活かしている方々だと感じます。そのため、我々としてやるべきことは、おごらずへつらわずに自分の長所と短所を分析した上で、長所を最大限に活かし、短所を特定して補っていくことでしょう。そうすれば、十分に生存していけると信じています。
来年2025年には、みなさんの発信が全部3桁ブクマになれることを願っております!一緒に頑張っていきましょう。
ではでは👋
*見出しの画像はUnsplashのCaleb Georgeが撮影した写真を使用しています。